【W杯】インテル化するW杯/西部謙司 - ”目黒のジダン”こと佐とうひできのブログ

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【W杯】インテル化するW杯/西部謙司

目黒のジダンです。

さぁ今日から準々決勝です。

その前に気になる記事を。

構図は…「バルセロナ×それ以外」
テストケースは「09-10 欧州CL 準決勝 バルセロナ×インテル」
といったところ。



変わりゆく戦術トレンド


■南米>欧州はボールのせい? それとも日程?
南米勢すべてと中米のメキシコがグループリーグを突破した一方で、前回のファイナリストであるイタリア、フランスが敗退。優勝候補と言われていたスペイン、イングランドも序盤はいまひとつの出来だった。
 明暗を分けたフットボール2大大陸だが、その要因の1つはボールではないかと考えている。公式球ジャブラニは軽くて、速く飛ぶらしいが、予想以上に扱いにくいようだ。高地での試合という条件も相まって、“飛びすぎる”ボールに欧州勢は苦労しているように見えた。サイドチェンジがタッチラインを越えてしまう、FKが思ったように落ちない、ミドルシュートがふき上がる……。

 欧州勢のゲームはロングパスで守備の薄い地域へボールを送り込んだり、長めのクロスボールで空中戦を挑んでいくなど、ロングパスの使用頻度は南米勢よりも多い。長いボールを組み立ての軸にしているので、ボールの影響はより大きかった。ボリビアやエクアドルなどの試合で高地に慣れている南米勢は、ボールが飛びすぎるときの戦い方を知っている。また、テクニックに優れた彼らはショートパスだけでも局面を打開できる。

 毎回取り上げられる過密日程の問題もあるかもしれない。欧州のリーグが終了してからワールドカップ(W杯)開幕までは約3週間だが、通常、リーグ開幕までに必要な準備期間は5~6週間と言われている。長いシーズンの疲労や負傷を引きずりながら参戦しなければならない選手も数多く、ウインターブレークのないイングランド、スペイン、イタリアはその影響が出ていたかもしれない。ただ、今回は南米勢も欧州リーグでプレーしている選手が多いので、その点で条件はそれほど変わらない。


■全体のトレンドはディフェンシブ

 全体的な戦術の傾向は守備中心である。深く引いて守備ブロックを作って組織的に守る。そしてチャンスは少なくてもカウンターアタックやセットプレーから得点を狙う。日本がまるっきりそうなのだが、一部の強豪国を除いてはこのやり方が多かった。イビチャ・オシム氏は「モリーニョの考え方に支配されている」と言っていたそうだ。確かにチャンピオンズリーグ(CL)でインテルが披露した戦法をコピーしたようなチームが多かった。インテルはバルセロナに対抗するためにアレをやったわけだが、W杯で流行したのは短時間で形になり、成果も出やすいからだと思う。

 グループHではスイスがインテルのようにプレーし、バルセロナのようなスペインを初戦で下している。これには2つの要因が絡まっている。
 まず、今大会のほぼすべてのチームがゾーンディフェンスを採用していて、4人×2ラインを基調とし、規則的なポジショニングで組織的に守る。ここまで1つの守備戦術に統一されたW杯は近年にはない。この守備戦術に対して、その規則性ゆえに規則的に穴を空けられることを証明したのが2年前のユーロ(欧州選手権)で優勝したスペインだった。規則的なポジショニングといっても、全員が同時に動けるわけではない。各選手のポジション移動には必ず“時差”が生じる。時差はスペースを生む。そのスペース、人と人の間に規則的にできるすき間にパスをつなぐことで、周辺により大きなスペースを生むことができる。スペインのパスワークがそれを可能にした。

 規則的なゾーンによる守備、それを打ち破るスペインの存在。この2つがすでに大会前に分かっていることだった。つまり、すべての参加国にとってスペイン、あるいはスペイン的なパスワークは大きな脅威だった。この構図はCLでの「バルセロナvs.対抗勢力」と同じである。そこで、インテルの方法が参考になった。スペイン的なパスワークを封じ込むには、中盤を放棄して後方に守備ブロックを作り、なるべくコンパクトにして(人と人の距離をあらかじめ近づけて)ポジション移動に生じる時差を少なくする。すき間をゼロにするのは不可能だが最少にする。スイスがスペイン戦で採用したのもこの方法だった。

 しかし、スペインと対戦しないチームもインテル式に傾いていたのはなぜか。これは簡単にいえば、すでに記したようにその方が短時間でマネできるからだ。スペインやバルセロナになるのは無理だが、インテルならまだ何とか形になる。スペイン式を成立させられる技量がなければ、パスワークに失敗してカウンターを仕掛けられてしまう。リスクが高い。要は、W杯では誰も負けたくなかったのだ。より簡単で、成果の出やすいほうに飛びついた。その背景には、代表チームに多くの時間を割くことはもはや、どの国にとっても容易ではないという事情も横たわっている。



■例外的な強豪国の戦術

 インテル化。これが今大会のトレンドといっていいかもしれない。ただし、インテルほどうまくやれるチームは実は少なかった。インテルにはディエゴ・ミリート、エトー、パンデフ、スナイデルといった強力なアタッカーがいる。彼らがやったのは“強者のカウンター”だった。しかし、W杯でインテル式を採用した多くの国には強力なカウンターのスターはおらず、普通に弱者のカウンターにすぎなかった。

 強者のカウンターの権威であるイタリアはコンダクターのピルロを欠き、肝心のカウンターエースとなるストライカーにも威力がなく、しかも鉄壁のはずの守備にも水漏れが生じていた。強者のカウンターどころか、「イタリア」という看板を外せば普通の弱いチームだった。
 強者のカウンターが成立していたのはフォルランとスアレスを擁するウルグアイ、クリスティアーノ・ロナウドのいるポルトガルぐらい。ブラジル、ドイツもこの部類に入るかも知れないが、この2チームについては後述したい。

 こうしたカウンター主体の戦術とは対照的に、ボールを支配して主導権を握り、より多くのチャンスメークと得点を狙うスタイルでプレーしていたチームとしては、アルゼンチン、オランダが挙げられる。ともにメッシ、ロッベンという特別な武器を持っているのが共通点だ。個人のドリブルで組織に穴を空けられるタレントがいる。この2人は、現代の守備戦術への1つの回答だ。
 初戦のナイジェリア戦で、メッシがドリブルを開始した時のほかのアルゼンチン選手たちは、まるで置き物みたいだった。メッシが苦しくなったときにワンツーをするための壁、ピンボールの障害物みたいになっていた。メッシやロッベンという個の力を生かすために、ほかの選手がいかに動き、または動かないで助けるか。バスケットボールのアイソレーション的な発想と言えるかもしれない。ただ、アルゼンチンとオランダは攻めているときは強いが、守備はそれほどでもない。攻められた時にどうなるかはまだ分からない。これはスペインも同じだ。ブラジルとドイツは強者のカウンターができて、相手に引かれたときにはパスワークを駆使できるし、セットプレーからねじ込むこともできる。最もバランスのとれた2チームで論理的には優勝に近い。

 しかし、大会で最も驚きを与えたのはチリだと思う。非常に攻撃的かつ組織的で、さほど特別なタレントがいないのに多くの決定機を作り出していた。即興ではなく、準備された攻撃のアイデアが見られた。また、単純に攻撃に人数をかけてもいる。リスクを冒していた。チームとしてリスクを冒す方法を知っていたとも言える。攻撃して得点するために緻密に準備されたチームだった。もちろんリスクはゼロにはならず、ゼロどころか多大なリスクを負っているために、スペインやブラジルには決定力の差でやられてしまったが、彼らの勇気と攻撃の美学はかつてのブラジル、オランダが持っていたものだ。インテル化に迎合せず、スペインやオランダとも違う独自の方法を示して多くのファンを獲得した特異なチームだった。

<了>


西部謙司(にしべけんじ)

1962年9月27日、東京生まれ。少年期を台東区入谷というサッカー不毛の地で過ごすが、小学校6年時にテレビでベッケンバウアーを見て感化される。以来、サッカー一筋26年、早稲田大学教育学部を卒業し、商事会社に就職するも3年で退社。サッカー専門誌の編集記者となる。95~98年までフランスのパリに在住し、欧州サッカーを堪能。主な著作に『Eat foot おいしいサッカー生活』『スローフット なぜ人は、サッカーを愛するのか』『1974 フットボールオデッセイ』『イビチャ・オシムのサッカー世界を読み解く』(いずれも双葉社)、『サッカーがウマくなる!かもしれない本』『監督力』『技術力』(いずれも出版芸術社)、『「日本を超える」日本サッカーへ』(COSMO BOOKS)、『サッカー戦術クロニクル』、『サッカー戦術クロニクルII』(いずれもカンゼン)、『サッカー日本代表システム進化論』(学研新書)など
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